How IT Works

プログラマーやっています。技術よりも人間学的なところが好きです。

研究不足の2020年

今年の総括

今年は記事がほとんど書けない年になりましたが、それは単純に外に発信できるだけの研究が進まなかったという単純な理由によります。

さらにその背景には組織体制の変化もありますし、心情の変化もあるように感じます。

会社に提出した目標シートは割と埋めることができたので仕事はしていたはずですが、一方でなぜ書くことがなかったについて弁明します。

当たり前のことを当たり前にやる

今年、特に後半は当たり前のことを当たり前にやるという仕事が多かったです。詳しいことは同僚のブログ記事にあります。

職能横断型スクラム体制になってからのチーム改善活動 - STORES Tech Blog

新しい組織横断型のチームに入って、文化的な衝突があり、そこをどうするのかというのが当面の課題でした。

MTGは週に何回やるか、リリースまでの計画はどうするべきか、スクラムはどう進めていくか、結合テストのスコープはどうするか、そういったことを詰めて、まとめて、実施するという作業をよくやっていました。

ここに特筆すべきことはなく、地道に課題を見つけて、潰して、また見つけるということの繰り返しでした。

改善も過去によかったプラクティスを基準にしてやってみるというやり方で、特段本を読んで研究するということもなかったです。

当たり前のことを当たり前にできていないのであれば、深い研究をしてもそこまでやることは変わらなかったと思います。

社内外を見回して平均点ぐらいにはなったかなというところで、今年は終わりました。なので、過去の貯金を使っただけで、あまり個人の資産は増えていません。

資産を増やすことを目標としているわけでもないので、それはそれでいいのですが、あえて筆をとりたいと思うようなことは少なかったです。

組織の分化と文化

組織全体で見ると今年は分業であったり、チームの分解が進んだ年ではありました。フロントエンドチームはこれまで多くても2チームぐらいに分かれて働いたりしていましたが、今年は4チームになりました。

機能開発するチームが2チーム、ライブラリや開発環境を整備するチーム、あとはマーケティング施策を打つチームでした。機能開発するチームも特徴が異なり、片方のチームは大規模なリファクタリングをやったりしていましたが、自分が所属するもう1つは小改善が多かったです。

チームが分かれたことで特徴が出てきました。TypeScript、OpenAPIあたりに強いチーム、Nuxt.jsやVue.jsに強いチーム、あとはバックエンドを含めた広範なドメインに詳しいチーム(自分たちのチーム)などです。

なので、あえて主体的に研究はしていませんが、組織体制が分かれたことで課題が変わり、興味が絞られたことでフロントエンドチーム全体ではある種の研究が行われたと言えそうです。

ただ、自分たちのチームは会社のドメインに強くなっただけなので、やっぱり書くことはないのですけれど。

片手間にやっていた勉強

研究と言えるレベルまではしてませんが、本自体は一年を通して読み続けていました。よく読んでいたのはデザイン系、アクセシビリティ系、コーチング系、TypeScript系です。

どれも社内で簡単な勉強会をやったりもしましたし、本も何冊か通読はしました。

ただ業務に生きたかと言われるとすごく微妙で、気持ちいいコードやマークアップは書けたと思いますが、質の違いを生み出すレベルではないです。

業務課題としてシンプルな画面が多かったのもありますし、単純に本は読めど、訓練・研究というほど深堀りしてないのが原因なのかなと思います。

どの分野もIT系の文脈で専門的に語られることが少なく、あっても深い考察と洞察があることはさらに少なかったので、自分から研究しない限り、自分のものにするのは難しかったでしょう。

研究について

趣味の方も今年はそこまで深く研究できていないので、研究能力が純粋に今年は低かったというのは言えるのかもしれません。

中国武術に興味を持ち、中国書籍を集めたまではよかったのですが、そこから無駄に日本武術と比較したり、動物の動きと比較したり、動画を集めたり、色々やりすぎたのが敗因でしょう。肝心の中国武術の本質が理解できていないので、独自研究になりすぎました。

Scrapboxも500ページぐらい作りましたが、99%のページは見返すこともなかったので、研究の方法・構造もよくなかったんでしょう。最初の構造が悪いと、そこからどうやってもうまくいかないのはアーキテクチャ論に似ていますね。

流石にこれはまずいと思って、後半は流派を絞り、枝葉の比較研究は捨てて、著名な武術家、研究家の文献に絞りました。また、資料を読むだけでなく、資料を時系列に並べたり、武術家同士の関連図など作りながら、試行錯誤を始めました。

そうするとこの武術家は流派の特徴を受け継ぎつつ、このあたりはこの人が独自で考えたのだろう、というのがはっきり見えるようになりました。それによって捨てていい要訣もわかってきました。

研究の範囲は狭くなり、しかし却って深さが無限になり、研究時間が伸びました。それにより理解が深くなり、効果も少しずつ実感しています。

また、ちょうど研究がうまく行き始めたところで、「独学大全」という本に出会いました。

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 | 読書猿 |本 | 通販 | Amazon

似ている手法もあるし、知らない手法もありましたが、研究の観点を整理しやすくなったのですごくありがたたかったです。自分は研究しているんだという自信みたいなものもつきました。

過去にメタ研究の分野は科学哲学など色々漁っていたものの、いいものに出会えず、結局「本を読む本」ぐらいしか知らなかったので、助かりました。修士時代にあるともっと嬉しかったかもしれません。

この本の手法を掛け合わせることでもう少し研究がよくなるのかなと思ったりします。

今後のこと

研究自体は昔からやっていたのですが、それを概念にできていなかったり、環境のおかげでたまたまできていることも有ったのでしょう。なので、環境が変わったり、トピックが変わると、研究ができなかったというのがありそうです。

当たり前のことを当たり前にやるようになった後は、卓越したことを為すにはどうすればいいかというのがチームのテーマになると思うので(そうで有って欲しい)、今度こそ個々人の研究スキルが求められる年になるのではという気がします。

そういう時にどういうふうに研究するべきなのか、研究とは何かというのがうっすらわかったので、そういう意味で辛抱の一年だったと言えなくもないのかもしれないです。

さらにメンバーが増えたらどうなるのか、そもそも事業計画的にどこまで研究改善できる時間があるかなど、わからないことも多いですが、現状の認識は書けたので、これを2020年の総括にしたいと思います。

研究することが仕事ではないし、目的ではないのですが、自分の認識を深めるあの時間がすごく好きなんだなと思ったりはしました。